開業届とは

開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、個人事業を開始したことを税務署に届け出る書類です。所得税法第229条に基づき、事業開始日から1ヶ月以内に提出する義務があります。

ただし、提出しなくても罰則はありません。しかし、提出しないと青色申告ができないなどのデメリットがあるため、提出することを強くおすすめします。

開業届を出すメリット

メリット詳細
青色申告ができる最大65万円の特別控除(青色申告承認申請書を同時提出)
屋号で銀行口座を開設できる「〇〇事務所」など屋号名義の口座
事業用クレジットカードを作れるビジネスカードの申込みに開業届の控えが必要
小規模企業共済に加入できる節税しながら退職金を積み立てられる
信用力が上がる取引先への信用、融資の申込み
保育園の申込み就労証明として使える

開業届を出すデメリット

デメリット詳細
失業保険(雇用保険)が受けられなくなる場合がある退職後すぐに開業届を出すと「失業状態」とみなされないことがある
扶養から外れる可能性配偶者の健康保険の扶養判定で不利になる場合がある(保険組合による)
確定申告の手間が増える帳簿の記帳が必要になる(白色申告でも記帳義務あり)

開業届の書き方

記入項目一覧

記入欄記入内容
提出先所轄の税務署〇〇税務署長
提出日届出書を提出する日令和8年4月1日
納税地自宅住所 or 事務所住所東京都渋谷区〇〇1-2-3
氏名本人の氏名山田 太郎
生年月日本人の生年月日平成2年1月1日
個人番号マイナンバー1234-5678-9012
職業事業の内容Webデザイナー
屋号事業の名前(任意)〇〇デザイン事務所
届出の区分開業にチェック☑ 開業
所得の種類事業所得にチェック☑ 事業(農業)所得
開業日事業を開始した日令和8年4月1日
事業の概要具体的な事業内容Webサイトのデザイン・制作
青色申告承認申請書同時に提出する場合は「有」☑ 有

屋号の決め方

屋号は必須ではありませんが、設定しておくとビジネスに便利です。

ルール内容
使える文字日本語、アルファベット、数字、一部の記号
使えない文字「株式会社」「合同会社」等の法人名称
変更後から変更可能(届出は不要)
重複他の個人事業主と同じ屋号でもOK(商標侵害に注意)

提出方法(3つの方法)

方法1:税務署に直接持参

所轄の税務署の窓口に提出します。控え用にもう1部持参し、受領印をもらうことが重要です(銀行口座開設等で必要になります)。

方法2:郵送

税務署宛てに郵送します。控え用と返信用封筒(切手貼付)を同封すると、受領印を押した控えが返送されます。

方法3:e-Taxで電子申請

マイナンバーカードがあれば、自宅からオンラインで提出できます。最も手軽な方法です。

青色申告承認申請書を同時に提出しよう

開業届と一緒に**「所得税の青色申告承認申請書」**を提出することを強くおすすめします。

青色申告のメリット

メリット効果
青色申告特別控除最大65万円の所得控除(e-Taxの場合)
赤字の繰越損失を3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺
少額減価償却の特例30万円未満の資産を一括経費に
専従者給与家族への給与を経費にできる

青色申告の控除額

記帳方法控除額
複式簿記 + e-Tax65万円
複式簿記 + 書面提出55万円
簡易帳簿10万円

提出期限

ケース提出期限
新規開業(1/1〜1/15に開業)その年の3月15日
新規開業(1/16以降に開業)開業日から2ヶ月以内
白色から青色に切り替えその年の3月15日まで

開業届と一緒に準備すべきもの

1. 事業用の銀行口座

プライベートと事業のお金を分けるために、屋号名義の銀行口座を開設しましょう。多くのネット銀行で屋号付きの口座を開設できます。

2. 会計ソフト

帳簿の記帳にはクラウド会計ソフトが便利です。

ソフト名月額特徴
freee1,480円〜初心者向け。操作が簡単
マネーフォワードクラウド800円〜銀行連携が豊富
やよいの青色申告8,800円/年〜老舗。サポートが充実

3. 事業用クレジットカード

経費の管理が楽になります。会計ソフトとの自動連携も便利です。

4. 請求書・見積書のテンプレート

クライアントへの請求書を準備しておきましょう。freeeやMisocaなどのクラウドサービスで無料作成できます。

開業届を出した後にやること

必須の手続き

手続き期限届出先
個人事業の開業届出書開業から1ヶ月以内税務署
青色申告承認申請書開業から2ヶ月以内税務署
事業開始等届出書開業後すみやかに都道府県税事務所

任意の手続き

手続き内容
国民健康保険への加入会社を退職した場合
国民年金への切り替え第2号→第1号被保険者
小規模企業共済への加入月額1,000〜70,000円の掛金で退職金を積立
経営セーフティ共済への加入取引先の倒産に備える。掛金は経費

個人事業主の税金

支払う税金の種類

税金内容税率
所得税事業所得に対して5%〜45%(累進課税)
住民税所得に対して約10%
個人事業税事業所得290万円超の部分3〜5%(業種による)
消費税課税売上1,000万円超 or インボイス登録10%(簡易課税制度あり)

確定申告のスケジュール

時期やること
日常帳簿の記帳、領収書の保管
12月経費の精算、棚卸し
1月年間の帳簿を締める
2月16日〜3月15日確定申告書を提出
3月15日所得税の納付期限
6月住民税の通知
8月・11月個人事業税の納付

フリーランスの社会保険

会社員から個人事業主になると、社会保険が大きく変わります。

項目会社員個人事業主
健康保険健康保険(会社と折半)国民健康保険(全額自己負担)
年金厚生年金(会社と折半)国民年金(全額自己負担)
雇用保険ありなし
労災保険ありなし(特別加入可能)

国保の保険料は自治体によって異なりますが、所得が高いと**月額上限(約85,000円)**に達することもあります。

よくある質問(FAQ)

Q. 副業でも開業届は出せる?

はい。会社員をしながら副業で個人事業を行う場合でも開業届を出せます。ただし、副業の所得が事業所得として認められるかは、継続性・営利性等で判断されます。

Q. 開業届を出すと会社にバレる?

開業届を出しただけでは会社に通知されません。ただし、住民税の金額変動で気づかれる可能性はあります。住民税を「自分で納付」にすることで対策できます。

Q. 開業届の提出期限を過ぎてしまったら?

遅れても罰則はありません。気づいた時点で提出すればOKです。ただし、青色申告承認申請書の期限には注意しましょう。

Q. 廃業届はいつ出す?

事業を辞めた日から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」の廃業欄にチェックして提出します。

まとめ

開業届は個人事業主の第一歩です。

  • 開業から1ヶ月以内に税務署に提出
  • 青色申告承認申請書を同時に提出(65万円控除のため)
  • e-Taxなら自宅から提出可能
  • 事業用口座・会計ソフト・クレジットカードも準備
  • 罰則はないが、提出しないと青色申告ができない

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