退職金の税金は優遇されている

退職金は長年の勤務に対する報酬であるため、税制上大きな優遇措置があります。具体的には以下の2つです。

  1. 退職所得控除:勤続年数に応じた大きな控除額
  2. 1/2課税:控除後の金額をさらに半分にして課税

この優遇措置により、退職金の手取り率は80〜100%と非常に高くなります。勤続20年以上で退職金2,000万円の場合、税金はわずか数十万円というケースも珍しくありません。

退職所得控除の計算

計算式

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

勤続年数別の控除額一覧

勤続年数退職所得控除額
5年200万円
10年400万円
15年600万円
20年800万円
25年1,150万円
30年1,500万円
35年1,850万円
38年(大卒〜60歳)2,060万円

※勤続年数の端数は切り上げ。例えば勤続20年3ヶ月は21年として計算します。

退職金の税金計算手順

ステップ1:退職所得控除額を計算

勤続年数が20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
勤続年数が20年超の場合:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

ステップ2:課税退職所得金額を計算

課税退職所得金額 =(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2

※1,000円未満切り捨て

ステップ3:所得税額を計算

課税退職所得金額に対して、所得税の税率を適用します。

課税退職所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超〜330万円以下10%97,500円
330万円超〜695万円以下20%427,500円
695万円超〜900万円以下23%636,000円
900万円超〜1,800万円以下33%1,536,000円

ステップ4:住民税額を計算

住民税 = 課税退職所得金額 × 10%

計算例

ケース1:勤続25年・退職金2,000万円

ステップ1:退職所得控除 800万円 + 70万円 ×(25 − 20)= 1,150万円

ステップ2:課税退職所得金額 (2,000万円 − 1,150万円)× 1/2 = 425万円

ステップ3:所得税 425万円 × 20% − 427,500円 = 422,500円 復興特別所得税:422,500円 × 2.1% = 8,872円 所得税合計:431,372円

ステップ4:住民税 425万円 × 10% = 425,000円

税金合計:856,372円 手取り:約1,914万円(手取り率:約95.7%)

ケース2:勤続38年(大卒〜60歳)・退職金2,500万円

退職所得控除:800万円 + 70万円 × 18 = 2,060万円

課税退職所得金額:(2,500万円 − 2,060万円)× 1/2 = 220万円

所得税:220万円 × 10% − 97,500円 = 122,500円 復興特別所得税:122,500円 × 2.1% = 2,572円

住民税:220万円 × 10% = 220,000円

税金合計:345,072円 手取り:約2,465万円(手取り率:約98.6%)

ケース3:勤続5年・退職金300万円

退職所得控除:40万円 × 5 = 200万円

課税退職所得金額:(300万円 − 200万円)× 1/2 = 50万円

所得税:50万円 × 5% = 25,000円 復興特別所得税:25,000円 × 2.1% = 525円

住民税:50万円 × 10% = 50,000円

税金合計:75,525円 手取り:約292万円(手取り率:約97.5%)

退職金の手取り早見表

勤続20年の場合(退職所得控除:800万円)

退職金課税退職所得所得税住民税手取り手取り率
500万円0円0円0円500万円100%
800万円0円0円0円800万円100%
1,000万円100万円約5.1万円10万円約985万円98.5%
1,500万円350万円約25万円35万円約1,440万円96.0%
2,000万円600万円約59万円60万円約1,881万円94.1%

勤続30年の場合(退職所得控除:1,500万円)

退職金課税退職所得所得税住民税手取り手取り率
1,000万円0円0円0円1,000万円100%
1,500万円0円0円0円1,500万円100%
2,000万円250万円約15.5万円25万円約1,960万円98.0%
2,500万円500万円約43万円50万円約2,407万円96.3%
3,000万円750万円約79万円75万円約2,846万円94.9%

確定申告は必要?

原則不要

会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が正確な税額を源泉徴収してくれるため、確定申告は不要です。

確定申告が必要なケース

  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合(退職金の20.42%が源泉徴収される)
  • 退職金以外の所得がほとんどなく、各種控除(医療費控除等)で還付を受けたい場合
  • 複数の会社から退職金を受け取った場合

注意すべき制度変更(2026年時点)

短期勤務の退職金に対する1/2課税の制限

勤続年数5年以下の場合、退職所得控除を超える部分のうち300万円を超える部分は1/2課税が適用されません。

勤続5年以下の場合:
・300万円以下の部分:1/2課税あり
・300万円超の部分:1/2課税なし(全額課税)

iDeCoの受給との関係

iDeCoを一時金で受け取る場合も退職所得控除が適用されますが、会社の退職金と受取時期が近いと、控除額が減る場合があります。

よくある質問(FAQ)

Q. 退職金に社会保険料はかかる?

かかりません。退職金からは所得税と住民税のみ天引きされます。

Q. 退職金を年金形式で受け取ると税金はどうなる?

年金形式の場合は「公的年金等控除」が適用されますが、一般的には一時金の方が税金は安いケースが多いです。

Q. 退職金と失業保険は同時にもらえる?

はい。退職金は所得として計算されますが、雇用保険の失業給付の受給条件には影響しません。

Q. 退職金がない会社もある?

法律上、退職金の支払い義務はありません。退職金制度がない会社も増えています。その場合は自分でiDeCoや貯蓄で備える必要があります。

まとめ

退職金は退職所得控除と1/2課税により、手取り率95%以上になるケースが多い非常に優遇された所得です。

  • 勤続20年なら800万円まで非課税
  • 勤続30年なら1,500万円まで非課税
  • 勤続38年なら2,060万円まで非課税
  • 確定申告は原則不要

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