「自分は将来いくら年金をもらえるのだろう」「老後の生活費は年金だけで足りるのだろうか」。多くの方が抱えるこの疑問に答えるには、年金制度の仕組みと計算方法を理解することが第一歩です。

この記事では、日本の公的年金制度の基本、国民年金と厚生年金の計算方法、年収別の受給額の目安、そして年金額を増やすための戦略について解説します。

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日本の公的年金制度の基本

2階建て構造

日本の公的年金は「2階建て」の構造になっています。

階層名称対象者特徴
1階国民年金(基礎年金)日本に住む20〜59歳の全員全員同じ金額(定額)
2階厚生年金会社員・公務員収入に応じた金額(報酬比例)

自営業・フリーランスの方は1階部分の国民年金のみ、会社員・公務員の方は1階(国民年金)+ 2階(厚生年金)の両方を受け取ります。

3つの被保険者区分

区分対象者保険料の負担
第1号被保険者自営業、フリーランス、学生など自分で国民年金保険料を納付
第2号被保険者会社員、公務員給料から厚生年金保険料が天引き(国民年金分を含む)
第3号被保険者第2号被保険者の配偶者(年収130万円未満)保険料の自己負担なし

国民年金(老齢基礎年金)の計算方法

満額の場合

国民年金は20歳から59歳までの40年間(480ヶ月)すべて納付した場合に満額が支給されます。

2025年度の満額: 年額816,000円(月額68,000円)

※金額は毎年度改定されます。

未納期間がある場合

未納期間がある場合、その分だけ減額されます。

受給額 = 満額 × 納付月数 ÷ 480

計算例:30年間(360ヶ月)納付した場合

816,000 × 360 ÷ 480 = 612,000円(年額)
月額にすると約51,000円

免除期間の扱い

経済的理由で保険料が免除された期間は、以下の割合で年金額に反映されます(2009年4月以降の期間)。

免除の種類年金額への反映割合
全額免除1/2
3/4免除5/8
半額免除3/4
1/4免除7/8

免除を受けた期間は「未納」とは異なり、受給資格期間にカウントされます。また、10年以内であれば追納して満額に近づけることも可能です。

厚生年金(老齢厚生年金)の計算方法

厚生年金は、加入期間中の報酬(給与・賞与)に基づいて計算されます。

基本の計算式

厚生年金の計算式は複雑ですが、大まかには次のように求められます。

年金額 = 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数

※この計算式は2003年4月以降に加入した期間に適用される計算式です。それ以前の期間は異なる計算式が使われます。

「平均標準報酬額」とは

標準報酬額は、毎月の給与と賞与を合わせた金額をもとに決まります。厚生年金の保険料計算に使われる「標準報酬月額」と「標準賞与額」の平均です。

実際の計算では、過去の報酬を現在の価値に換算する「再評価」が行われるため、正確な金額を自分で計算するのはかなり困難です。

簡易計算のコツ

目安としてよく使われる簡易計算があります。

厚生年金の年額 ≒ 平均年収 × 加入年数 × 0.005481

計算例:平均年収500万円で38年間加入した場合

5,000,000 × 38 × 0.005481 = 1,041,390円(年額)
月額にすると約86,783円

これに国民年金(基礎年金)が加わります。

厚生年金: 約86,783円/月
基礎年金: 約68,000円/月(満額の場合)
合計: 約154,783円/月

年収別の年金受給額の目安

38年間(大学卒業22歳〜60歳)厚生年金に加入した場合の目安です。基礎年金は満額として計算しています。

平均年収厚生年金(年額)基礎年金(年額)合計(年額)合計(月額)
300万円約62.5万円81.6万円約144.1万円約12.0万円
400万円約83.3万円81.6万円約164.9万円約13.7万円
500万円約104.1万円81.6万円約185.7万円約15.5万円
600万円約125.0万円81.6万円約206.6万円約17.2万円
700万円約145.8万円81.6万円約227.4万円約19.0万円
800万円約166.6万円81.6万円約248.2万円約20.7万円
900万円約187.4万円81.6万円約269.0万円約22.4万円
1,000万円約208.3万円81.6万円約289.9万円約24.2万円

※厚生年金には上限があります。標準報酬月額の上限は65万円(2025年度時点)のため、年収が高くても上限以上の年金は受け取れません。

自分の年収で具体的にシミュレーションしたい方は、年金シミュレーションツールをご活用ください。

繰上げ受給と繰下げ受給

年金の受給開始は原則65歳ですが、60〜75歳の間で受給開始時期を選べます。

繰上げ受給(60〜64歳から受け取る)

65歳より前に受け取り始めると、1ヶ月あたり0.4%減額されます(2022年4月以降に60歳になる方の場合)。

受給開始年齢減額率月額15万円の場合
60歳−24.0%約114,000円
61歳−19.2%約121,200円
62歳−14.4%約128,400円
63歳−9.6%約135,600円
64歳−4.8%約142,800円
65歳0%(基準)150,000円

繰上げ受給の減額は一生涯続きます。一度繰り上げると元に戻すことはできません。

繰下げ受給(66〜75歳から受け取る)

65歳より後に受け取り始めると、1ヶ月あたり0.7%増額されます。

受給開始年齢増額率月額15万円の場合
65歳0%(基準)150,000円
66歳+8.4%約162,600円
67歳+16.8%約175,200円
68歳+25.2%約187,800円
70歳+42.0%約213,000円
75歳+84.0%約276,000円

損益分岐点

繰下げ受給は長生きするほど得をしますが、受け取れなかった期間の年金はもらえません。

繰下げの損益分岐点(65歳で受け取り始めた場合の累計を上回る年齢)は、おおよそ次のとおりです。

受給開始年齢損益分岐年齢(目安)
66歳約77〜78歳
67歳約78〜79歳
68歳約79〜80歳
70歳約81〜82歳
75歳約86〜87歳

日本人の平均寿命(2023年時点で男性81.09歳、女性87.14歳)を考えると、70歳程度までの繰下げは統計的には得になる方が多いと考えられます。ただし、実際には健康状態やその時点での生活費の必要性によって判断するのが賢明です。

年金額を増やす方法

1. 国民年金の未納を解消する

過去に未納期間がある場合、追納(過去10年以内)や任意加入(60〜64歳)で保険料を納めることで、基礎年金額を増やせます。

2. 付加年金に加入する(第1号被保険者向け)

月額400円の付加保険料を国民年金に上乗せして納めると、「200円 × 納付月数」が年金に加算されます。

たとえば20年間(240ヶ月)付加保険料を納めた場合:

  • 追加の保険料: 400円 × 240ヶ月 = 96,000円
  • 年金の増加額: 200円 × 240ヶ月 = 48,000円/年

2年で元が取れる計算で、非常にお得な制度です。

3. 国民年金基金に加入する(第1号被保険者向け)

自営業者向けの上乗せ年金です。掛金は全額社会保険料控除の対象になるため、節税にもなります。

4. iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用する

iDeCoは自分で運用する年金制度です。掛金が全額所得控除の対象になり、運用益も非課税です。

加入者の区分掛金の上限(月額)
自営業(第1号)68,000円
会社員(企業年金なし)23,000円
会社員(企業型DCのみ)20,000円
公務員12,000円
専業主婦・夫(第3号)23,000円

※2024年12月以降の法改正で上限が一部変更されています。最新の情報は公式サイトでご確認ください。

5. 繰下げ受給を検討する

前述のとおり、受給開始を65歳以降に遅らせることで年金額を増やせます。1年遅らせるごとに8.4%増額されます。

6. 厚生年金の加入期間を延ばす

2022年10月からパート・アルバイトの方の厚生年金加入が拡大されました。短時間労働でも厚生年金に加入できる場合、将来の年金額が増える可能性があります。

年金に関するよくある疑問

Q. 年金は将来もらえなくなる?

日本の公的年金は「賦課方式」で、現役世代の保険料でその時の高齢者の年金を賄う仕組みです。制度が完全になくなることは考えにくいですが、少子高齢化の影響で給付水準が徐々に下がる可能性は政府も認めています。

厚生労働省の財政検証(5年ごとに実施)では、将来の年金給付水準(所得代替率)の見通しが公表されています。

Q. ねんきん定期便で何がわかる?

毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」には、これまでの加入実績と将来の年金見込額が記載されています。50歳未満の方には「これまでの加入実績に基づく年金額」、50歳以上の方には「60歳まで現在の条件で加入し続けた場合の見込額」が記載されます。

「ねんきんネット」に登録すると、より詳細なシミュレーションがオンラインで可能です。

Q. 自営業は年金が少ない?

自営業(第1号被保険者)は国民年金のみのため、会社員・公務員と比べて受給額が少なくなります。その差を埋めるために、付加年金、国民年金基金、iDeCoなどの活用が重要です。

Q. 離婚した場合の年金分割は?

婚姻期間中の厚生年金記録を分割できる制度があります。2008年4月以降の第3号被保険者期間は自動的に2分の1に分割(3号分割)、それ以前の期間は合意または裁判所の決定で分割(合意分割)されます。

Q. 遺族年金とは?

年金加入者が亡くなった場合、一定の要件を満たす遺族に支給される年金です。遺族基礎年金(子のある配偶者または子に支給)と遺族厚生年金(配偶者等に支給)があります。

老後の生活費と年金のギャップ

老後に必要な生活費の目安

総務省の家計調査によると、65歳以上の無職世帯(夫婦2人)の1ヶ月の平均支出は約25〜28万円程度です(住居費を除く)。

一方、公的年金の平均的な受給額(夫婦2人分)は約22〜25万円程度とされており、数万円のギャップがあります。

ギャップを埋めるための選択肢

  • iDeCoや企業型DC: 自分で運用して老後資金を準備
  • つみたてNISA / 新NISA: 非課税で資産運用
  • 退職金: 企業の退職金制度を確認
  • 就労: 65歳以降も可能な範囲で働く
  • 支出の見直し: 固定費の削減、住居費の最適化

まとめ

日本の公的年金は国民年金(基礎年金)と厚生年金の2階建て構造です。国民年金は40年間満額納付で年額約81.6万円(月額約6.8万円)、厚生年金は「平均年収 × 加入年数 × 0.005481」で概算できます。

年金額を増やすには、未納期間の解消、付加年金やiDeCoの活用、繰下げ受給の検討が有効です。また、公的年金だけでは老後の生活費を完全にカバーするのが難しいため、早いうちから資産形成にも取り組むことが大切です。

自分のケースで具体的にシミュレーションしたい方は、年金シミュレーションツールをぜひご活用ください。年収と加入年数を入力するだけで、おおよその受給額がわかります。

この記事の内容はAssisty年金シミュレーションで実際にお試しいただけます。